墓地荒らし、〈塩〉、等々――これらの事実は、なにを語っているのか? 最後にウォード氏が、もっとも効果的な方法を思いついた。このような手段をとるには、意志を強固にする必要があっ

たが、あえて実行に踏みきった。不幸て、それにインクで、黒眼鏡と黒く尖った顎ひげM 字額を入念に描きくわえたのだ。できあがったものを探偵たちに手渡して、至急、ポー

トゥックスト村にひっ返し、アレン博士と交渉のあった商店主たちに見せるようにと命じた。
せ、彼と医師をのぞく全員が部屋を立ち去った。時刻は正午であったが、亡霊の出没するこの邸宅を、夜の闇が包みかくした感じであった。ウィレット老医師は邸の主人と真剣に話しあって、今

くらくらしてきたし、召使たちは一団になって、渦巻いて立ちのぼる黒煙を見守っていた。永劫《えいごう》とも思われる時間がすぎて、ようやく毒煙の色も薄らいだかに見えると、鍵をかけた

ドアの向うに、物をこするような、ひきずるような、その他さまざまな、音ともいえぬ音がつづいたあと、戸棚の扉をあらあらしく閉める音がして、ウィレットが姿を現わした。げっそりやつれ

た蒼白の顔に、悲痛な表情を浮かべ、屋根裏の実験室から持ってきた、布をかぶせたバスケットを提《さ》げている。老医師は部屋を出るに先だって、窓をひらいておいた。そこから、外の新鮮

な空気がながれこんで、室内に立ちこめた消毒薬に似た異様な臭いとまざりあった。古いマントルピースの飾り棚には、いまなお狂気が漂っていたが、〈悪〉の気配は完全に拭いとられたように

思われ、白塗りに模様がえした壁板にいたっては、ふたたび品位と平穏をとりもどし、一度ジョゼフ・カーウィンの肖像画を飾ったことなど、まったく忘れ去Pretty renew 旺角った印象をあたえていた。夜が近づ

いてきた。しかし、いまはその影にさえ、不安の色のひそんでいることはなく、感じとれるものといっては、もの静かな憂鬱だけであった。その部屋のなかに起きたことについて、老医師は口を

緘《かん》して語ろうとしないで、ひとこと、ウォード氏にこういった。「なにを質問されても、いまのところ、答えるわけにはいかないので、さようご承知ください。ただ、これだけはいえま

す。この部屋には、ある種の魔法がかかっていました。わたしはそれを、徹底的に洗い浄《きよ》めました。それであなたの邸の人たちも、今後は安らかに眠ることができましょう」
 
 
 オグトロド アイ、フ

 ウィレットの口から、その最初の一節がひびきわたると、すでに開始されていた患者の呪文がぴたっと停止した。声も出せず、怪物はただ、両腕を苦しげにふりまわすばかりだったが、いつか

その腕もねじまがっていった。そして、ヨグ・ソトトの名が呼びあげられると同時に、怪物の身体に、身の毛もよだつ変化が生じた。それは単純に〈解体〉と呼ぶより、〈変形〉もしくは〈萎縮

〉と名付けるのが至当な現象であった。ウィレットは、呪文を唱え終わらぬうちに、失神するのを怖れて、両眼を閉じた。
 しかし、彼は失神しなかった。呪文を唱え終わった瞬間、数世紀にわたって神をけがし、禁断の秘密を享受した男の姿は消えて、ふたたびこの世を悩ますQV嬰兒沐浴油惧《おそ》れがなくなった。時空を超

えた狂気は鎮静し、チャールズ・デクスター・ウォードの事件は終結した。ウィレット医師は、恐怖の病室からよろめき出るに先だって、目をみひらき、呪文を記憶に残したのが、無益な努力で

なかったと知った。彼が予告したとおり、そこに酸の必要はなかった。一年前に消滅した呪われた肖像画とおなじに、いまジョゼフ・カーウィンは、床を蔽う灰青色の塵と変わっていた